循環器内科
血液の循環に関係している器官のことを循環器といいます。循環器には、心臓や血管(動脈、静脈、毛細血管)のほか、リンパ管が含まれ、これらで発生したとされる病気や症状について、診察、検査、治療を行います。
検査としては、血液検査、心電図(12誘導心電図、ホルター心電図(24時間心電図)、運動負荷心電図)、心臓超音波検査(心エコー)、胸部X線撮影、CT、MRI、心臓カテーテル検査などがあります。これらの検査結果も踏まえながら総合的に判断し、診断をつけていきます。
以下の症状に心当たりがあれば、循環器内科を一度ご受診ください
- 胸が締め付けられるような痛みがある
- 動悸がする
- 息切れ、呼吸困難がある
- めまい、立ちくらみがある
- 高血圧である
- 低血圧である
- 足がむくんでいる
- 手足にしびれや冷えがある など
代表的な疾患
高血圧、低血圧、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、心臓弁膜症、心不全、末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血) など
高血圧
血圧とは、心臓から全身の各器官へ血液が血管を通して送られる際に血管壁に加わる圧力のことを血圧といいます。この血圧が基準とされる数値を超えて慢性的に高いとなれば高血圧と診断されます。具体的な数値に関しては、収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上、拡張期血圧(最低血圧)が90 mmHg以上となっています。
自覚症状が出にくいので、多くの患者様は病状を進行させます。このような状態になると心臓から余分な負荷をかけて血液を送る必要があり、それによって血管壁にも常に余計な圧が加わるので、動脈硬化を促進させることになります。これが血管の肥厚化や内部の脆弱化を招き、さらに血管狭窄や閉塞といったことになれば、脳血管障害(脳梗塞、脳出血 等)、心筋梗塞、心不全、腎障害、閉塞性動脈硬化症などの合併症を引き起こすこともあります。
発症の原因は2つあるとしています。ひとつは原因がはっきり特定できない本態性高血圧です。ただ現時点では、遺伝的要因(高血圧になりやすい体質)や不摂生な生活習慣(過食、運動不足、喫煙・飲酒、ストレス 等)などが関係しているのではないかといわれています。もうひとつは、二次性高血圧です。これは何らかの原因疾患があって発症する高血圧です。種類としては、内分泌疾患(原発性アルデステロン症、クッシング症候群、甲状腺疾患、褐色細胞腫 等)、血管疾患(腎血管性高血圧 等)、睡眠時無呼吸症候群、薬剤の影響といったものがあります。
よくみられる症状ですが、合併症が発症するようになる頃には何らかの症状が現れるようになりますが、それまでは自覚症状が出ることは少ないです。ただ計測した血圧の数値が異常であるとの指摘を受けた場合は、症状がなくても受診されるようにしてください。
治療について
治療の目的は、高くなっている血圧を下げ、それを維持していくことで、合併症の発症リスクを低減させることにあります。そのためには、まず生活習慣の見直しを行います。食事療法では、1日の塩分摂取量を6g未満、バランスのとれた食事内容(野菜や魚を積極的にとる)にする、肥満の方は減量のために食事制限を行います。お酒を飲む方は節酒、タバコを吸う方は禁煙もします。このほか、身体を動かすことも血圧を下げることが期待できるので運動療法も日常生活に取り入れます。
狭心症
心臓(心筋)に酸素や栄養を含む血液を送るための血管のことを冠動脈といいます。この冠動脈が何らかの原因によって狭窄し、これによって十分な血液が心筋に供給されず、それに伴って起きる様々な症状のことを狭心症といいます。
狭心症は、大きく3つに分かれます。ひとつは労作性狭心症です。これは身体を動かすなど労作時に胸痛や胸に圧迫感などを感じるようになります。この場合、冠動脈の内壁にコレステロールなどの塊(アテローム)が蓄積し、動脈硬化を促進させていきます(動脈硬化の原因は、主に喫煙や生活習慣病の罹患 等)。アテロームの蓄積によって血流は悪化していき、労作時は多くの血流を必要とするものの血液が不足することで上記の症状がみられます。胸痛等の症状は3~5分程度続くとされ、安静にすることで症状は治まるようになります。
2つ目は不安定狭心症です。これは冠動脈の動脈硬化がさらに進んだ状態で、アテロームがどんどん蓄積した状態がプラークです。これが破綻すると血栓が形成されるなどして、より血管の狭窄が進行します。この場合、胸痛や胸部の圧迫感等の症状は、安静時でも起きるようになります。上記の症状は数分~20分程度持続します。
なお3つ目のタイプである冠痙縮性狭心症は動脈硬化とは無関係です。この場合、冠動脈がけいれんを起こすことで血流が悪化してしまい、胸痛や息苦しさ等の症状が現れます。夜間~朝方に症状が出やすくなるとされ、症状は数分~15分程度は持続するようになります。
診断をつけるための検査として、心電図、血液検査、心臓超音波検査などによって、発症の有無等を確認していきます。
治療に関してですが、血流悪化による発作がみられている場合は、速効型の硝酸薬(ニトログリセリン 等)が使用されます。発作予防としては、カルシウム拮抗薬、β遮断薬、硝酸薬が用いられます。このほか、血栓を予防する効果がある抗血小板薬、動脈硬化の進行を抑制する働きがあるとされるスタチン系の薬剤が使われることもあります。また必要であれば、狭窄部位を拡張させるカテーテル治療が検討されます。
また動脈硬化を促進させないために生活習慣を見直すことも大切です。具体的には、栄養バランスのとれた食事に努め、適度に運動を行うといったことです。また喫煙される方は禁煙を実践します。
心筋梗塞
冠動脈が何らかの原因で詰まってしまい、それによって詰まった箇所よりも先に血液を送ることができず、やがて心筋が壊死し、様々な症状が現れるようになるのですが、最悪の場合は死に至ることもある病気です。
原因は冠動脈での動脈硬化の促進による狭窄、あるいは閉塞です。動脈硬化を促進させる原因は、生活習慣病の罹患、あるいは喫煙などによるものです。これらによって、冠動脈の内壁にコレステロール等の塊(アテローム)がどんどん積み重なると、次第にプラークとなっていきます。これが破綻すると、血栓が形成されるのですが、それによって血管閉塞が起きてしまっている状態が心筋梗塞(急性心筋梗塞)です。
この場合、安静にしている状態であっても激しい胸痛や絞扼感がみられるほか、嘔吐・吐き気、冷や汗、息切れなどの症状もみられるようになります。これらの症状が20分以上持続するようになります。
治療をする場合ですが、発症して間もない状態であれば、速やかに血管の詰まりを解消していく必要があります。そのため、血栓を溶かす効果がある薬(t-PA 等)の投与による血栓溶解療法、あるいは詰まった血管をカテーテルによって拡張させる経皮的冠動脈形成術(PCI)が行われます。また発症からある程度時間が経過した状態であれば、薬物療法として、抗血小板薬、スタチン系薬剤のほか、症状をやわらげたり、発作を予防したりするためにβ遮断薬や硝酸薬、カルシウム拮抗薬等が使われます。
不整脈
心臓の鼓動というのは、一定のリズムを刻んでいます。1分間で心臓が拍動する回数のことを心拍数といいます。この心拍数が正常でないと判定されると不整脈ということになります。なお正常な心拍数というのは、安静時で50~100回の間となっています。
ただ心臓というのは1日で約10万回拍動するといわれています。そのため、健康な方であっても、正常とされる範囲から外れることもよくあります。したがって不整脈の指摘を受けたからといって、何らかの病気があるというわけではありません。ただ原因をはっきりさせるために検査を受ける必要が出てくることはあります。
頻脈、徐脈、期外収縮の3タイプ
不整脈は大きく3つのタイプ(頻脈、徐脈、期外収縮)に分かれます。頻脈(頻脈性不整脈)は、心拍数が100回以上ある場合としています。また徐脈(徐脈性不整脈)は心拍数が50回未満のケースをいいます。また期外収縮は、一定のリズムを刻んでいる(洞調律)中に余分な拍動が入っている状態のことをいいます。これらによって、よくみられる主な症状は、動悸、息切れ、めまい、立ちくらみ、脈が飛ぶ感覚がする、意識が遠のくといったものです。
発症の原因としては、加齢や体質、ストレス、カフェインやアルコールの過剰摂取といった場合もあります。また、薬剤の影響(抗うつ薬や降圧薬 等)というケースもあります。
注意しなくてはならないのは、頻脈でよくみられる心房細動や心室細動です。心房細動は、心臓の中の心房の部分で発生する異常な収縮です。細かく動き、脈が速くなります。糖尿病や高血圧といった生活習慣病や心臓の病気(冠動脈疾患、心臓弁膜症、心不全 等)やそれ以外の病気(高血圧、甲状腺疾患、慢性閉塞性肺疾患 等)で引き起こされることもあります。
この状態を続けると血栓が形成されやすくなり、脳梗塞を発症してしまうこともあります。また心室細動は、4つの部屋に分かれている心臓の下の部分(心室)が極端に小刻みに震えています。このような状態になると心臓からうまく血液が送り出せなくなり、心停止することもあります。このような状態は、心筋梗塞、心筋症、心不全が重度にあるという患者様に起きやすいとされています。上記以外では、日常生活に支障をきたすほどの徐脈であるという場合も要注意です。
治療に関してですが、とくに問題がないとされる不整脈については、経過観察になります。また症状が強く出ている、緊急性が高いとなれば治療対象となります。この場合、頻脈の患者様であれば、薬物療法が選択され、抗不整脈薬や抗凝固薬が用いられます。薬物療法では効果が乏しいとなれば、電気的除細動やカテーテルアブレーション治療などが検討されます。
また徐脈で意識が遠のいているとされる患者様については、ペースメーカーが心臓に埋め込まれます。